北海道石狩振興局 / ゼロスペック株式会社様

官民協働×IoTによる「灯油難民」解決モデルの構築にシンプル・低コストなIoTネットワーク「Sigfox」が貢献


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北海道では、給油所(ガソリンスタンド)の減少と働き手不足によって、暖房や給湯など生活に不可欠な灯油の配送が困難になり、必要な時に灯油を確保できない「灯油難民」が生じる懸念が強まっている。北海道新篠津村では、このような課題をICT/IoTの活用で解決しようという取り組みが進められ、KCCSが提供するIoTネットワーク「Sigfox」を活用した大規模な実証実験により、確かな効果が確認された。

背景・課題

今、ICTやIoTを使って生活環境の改善やサービス向上を図ることが大変重要になっています。(渡辺氏)


北海道では、給油所(ガソリンスタンド)の減少と働き手不足によって、暖房や給湯など生活に不可欠な灯油の配送が困難になり、必要な時に灯油を確保できない「灯油難民」が生じる懸念が強まっている。地域社会における高齢化や過疎化も重なる中、配送業務の効率化、採算性の維持は喫緊の課題であり、これをICT/IoTの活用で解決しようという取り組みが進められている。2017年12月から2018年5月には、北海道新篠津村で大規模な実証実験が行われ、確かな効果が確認された。この実証実験では、家庭の灯油タンクにスマートオイルセンサを設置し、取得したデータをIoTネットワーク「Sigfox」でサーバに送信して遠隔で灯油タンク内の残量を可視化している。


北海道庁
北海道農政部農政経営局
農政経営課長
渡辺 稔之氏

当時、北海道庁の地方局の一つである石狩振興局で実証実験に携わった渡辺稔之氏は、次のように話す。 「自治体や配送事業者など多くの人が将来的な灯油難民発生に危機感を持っていましたが、課題解決に向けてどのようにアプローチすればよいのかわからない状況でした。そんな折、同じ問題にベンチャー企業として取り組んでいるゼロスペック様と巡り合い、ICT/IoTを活用するという方向性が見えたのです。 実証実験を新篠津村で行ったのは、高齢化や過疎化が進んでいる人口3,000人ほどの純農村地域で、寒冷地、豪雪地帯ということが理由です。こうした地域でも通信システムやセンサがきちんと機能すれば、将来に向けて効果を証明できると考えました。」

ソリューションを提供するIoTベンチャーのゼロスペック株式会社多田満朗氏は、灯油タンク内の残量を測定するセンサの開発や、今後のサービス展開にはコストが重要と話す。安価な通信費に加え、乾電池で5年間通信ができることによる運用コストの軽減が、センサの通信方式にSigfox(LPWA)を採用した理由だという。
「どのくらいの価格なら喜んで導入いただけて、明確な価値をご提供できるか、ということを最も意識しています。センサの開発初期はLTEを使っていましたが、送信するデータは1回あたり12バイト程度なので、LTEでは用途に対してオーバースペックでコストも上がってしまいます。そこで当時注目され始めていたLPWAを使おうと考え、シンプルで低コストなSigfoxを選んだのです。今回は積雪が多い地域ということもあり、アンテナの選定にも気を遣いました。また、バッテリーは5年以上持つように設計しています。Sigfoxは消費電力がとても少ないので、こうした用途には最適です。」


ゼロスペック株式会社
代表取締役社長
多田 満朗氏

通信キャリアとして日本国内でSigfoxを提供している京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)の大木浩は、各地の展開状況や当時の対応を次のように話す。「Sigfoxは2017年2月のサービス開始以降、人口の多い地域から整備を進め、現在は95%以上の人口カバー率を誇ります。当時エリアが未整備だった新篠津村には、実証実験のためにSigfoxの基地局を設置させていただきました。」

解決・今後

Sigfoxのシンプルな考え方や、適切な価格でのサービス提供はIoTによる地域の課題解決に最適です。(多田氏)

実証実験の結果、給油回数は約20%、配送日数は約36%の削減となり、費用対効果の試算でも十分な成果が得られるとわかった。これを受けて、ゼロスペックでは北海道や東北、関東など各地域でプレサービスを展開していると多田氏は話す。
「ここから本当に事業化して、皆様に価値をご提供していくのが私たちの役割だと思っています。KCCSとも良好なパートナーシップを保ち、Sigfoxの活用で相乗効果を生み出していきたいですね。」


KCCS
LPWAソリューション事業部
副事業部長
大木 浩

大木は、通信インフラとしてのSigfoxの強みを改めて確認できたと話す。
「私たちはSigfoxを、5Gなどの高速なネットワークとは対極にある0Gネットワークと位置づけ、通信速度を落とすことで低価格、低消費電力を実現し、電池運用などIoTに新たな価値を提供します。今回、新篠津村に設置したセンサは30㎝以上の雪が積もっても通信でき、センサデータは30㎞ほど離れた札幌でも受信できていたことがわかりました。実証実験でよい結果が得られたことで、今後の展開にも弾みがついています。」

渡辺氏は、今回の実証実験の意義を改めて感じていると話し、ICT/IoTの活用、そしてSigfoxの利用による自治体の課題解決をさらに進めていきたいと意欲を見せる。
「今回は、Sigfoxで灯油難民というエネルギー弱者を救う方法を見出すことができました。ほかにも、農業の栽培管理やインフラ監視などにも利用できるでしょう。少量のデータを取得するシンプルなシステムなら、コストを抑えながら地域の課題を解決できます。北海道のような広い地域では、LPWAにはまだまだ活用の可能性があり、Sigfoxのこれからの展開にはとても期待しています。行政としても新たな試みをしていきたいと思っています。」

この取り組みは、2019年3月に総務省の「ICT地域活性化大賞2019」において、ICT/IoTの利活用で地域が抱える課題を解決する「優良モデル」として評価され、石狩振興局 / ゼロスペック / KCCSは『大賞/総務大臣賞』を受賞した。Sigfoxは低コストと電池運用の強みを活かし、すでに水道やガスなどの生活インフラ、高齢者や子供の見守り分野での活用が進んでおり、今後さらなる展開が期待されている。

取材時期:2019年7月
掲載日:2019年9月24日


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