事例紹介

国立研究開発法人 防災科学技術研究所様
使える防災IoTによる中小河川の水害リスクの可視化

農業・環境設備・社会インフラ

国立研究開発法人 防災科学技術研究所様

URL:https://www.bosai.go.jp/

災害をリアルタイムで観測・予測するための情報プロダクツ開発に取り組む国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)。使える防災IoTを目指した取組みとして、過去に水害の被災経験がある滋賀県竜王町における中小河川でのIoTを活用した水害リスク可視化の実証実験※1に積水樹脂株式会社(以下、積水樹脂)の提供する「小型IoT水位センサ」を採用した。

※1:令和元年度総務省事業「IoT利用環境の適正な運用及び整備等に資するガイドライン等策定事業」に採択された「Society5.0社会実現に向けた多様な自然環境下でのIoTの適切な利用環境の構築事業」(代表団体:国立研究開発法人防災科学技術研究所)の一部として実施された。

中小河川の水害リスクを可視化し地域課題の解決を図る

近年多発する豪雨災害によって、各地で自治体が管理する中小河川の氾濫による被害が生じている。しかし、中小河川には水位計の設置がきわめて少なく、自治体や企業における避難や対策の判断が難しい。そのため、災害時には自治体職員がパトロールを行い、河川の状況を定性的に確認している場合が多い。市町村合併に伴い管轄は拡大、高齢社会の加速によって要配慮者が増加することから自治体の負荷は益々増大しており、防災分野でのIoTの活用は急務となっている。

そこで、防災科研では、低コストなIoT水位センサの計測データをリアルタイムでクラウドに収集し、災害リスク情報を遠隔で把握できるIoTサービスを構築し実証実験を行うこととした。この取り組みと、水害リスクの課題と向き合いながら工場や商業施設の誘致に注力しており、また町外からの訪問者も多いという滋賀県竜王町のニーズが一致、総務省のマッチングイベントを介して共創へと発展した。IoT水位センサは、自治体が導入可能な低コストで小型・軽量・電池式、工事費の安価なものを検討する中、Sigfoxを活用した積水樹脂の「小型IoT水位センサ」を採用した。実証実験では、平成29年台風21号での浸水実績箇所を中心に5つの中小河川に13台のセンサを設置し、IoT水位データ可視化システムを実装した。

滋賀県竜王町での小型IoT水位センサの設置状況と配置

遠隔で安全に中小河川の水位を把握

IoT水位データ可視化システムは、中小河川に設置した小型IoT水位センサが計測データをSigfoxでクラウドに自動で送信、事務所のパソコンや出先でのスマートフォンからWebアプリを通じて現地の河川水位状況を把握することができるシステム。

防災科研のIoT水位データ可視化システム

「地域の水害リスクを把握するには水位センサを複数設置し面的な水位情報の分析が必要なため、計測精度よりも必要機能を有し自治体が導入しやすい低コストであることが重要です。調査する中、積水樹脂が開発した小型IoT水位センサに着目し、実証実験での共同研究を行いました。小型IoT水位センサは非常に小型・軽量であるため既設構造物への取付けも簡単で、超音波式であるためメンテも容易で、水害リスク把握に十分な性能を備えています。中小河川の水位データを可視化することで、遠隔において安全な環境でリアルタイムに状況を把握できるので、人手の足りない災害時の自治体職員の業務の効率化と迅速な判断に資するとともに、近年の激甚化する災害に対しデータに基づく対応と事後分析が可能となります。今後はこのシステムを進化させてバックウォーター現象※2のリアルタイム検知も可能とし、更なる地域課題の解決に役立つ防災情報プロダクツを開発していきます。」 (防災科学技術研究所 共創推進室長 中村一樹氏)

※2:バックウォーター現象:中小河川等の支川が一級河川等の本川に流入する箇所において、豪雨時の本川の水位上昇に伴い支川が流れこまなくなり、通常起こらない本川から支川への水の逆流現象が発生し、やがて内水氾濫に繋がる現象。

令和元年台風19号の襲来があり、災害時も変わらず機能することを確認

2019年9月より実証実験をスタートし、期間中に滋賀県竜王町に令和元年台風19号が襲来した。大雨となり、東近江アメダスでは10月12日の24時間雨量が119mmを観測、中小河川ではバックウォーター現象も発生したが、Sigfox通信およびセンサによる水位計測ともに問題なく動作し、大雨・強風・急な水位上昇時でも変わらず機能することが確認された。

滋賀県竜王町での令和元年台風19号襲来時のバックウォーター現象

「IoT水位センサにより、これまで不明であった中小河川の水位変動が良く分かりました。大雨時における河川水位状況は現地パトロールで確認していましたが、気象状況によっては確認が出来ない場合もありました。このことから、パソコンやスマートフォンによる遠隔で現地状況が把握できたことは、状況に応じた災害対策を講じる上で有効な手段であると感じました。また、遠隔監視の機器として、カメラは現状の直感的理解に適しますが、IoT水位センサは定量的にリスクが把握できるとともに、次の災害に向けた事後の分析やデータ取得ができる点が優れています。これからも防災・減災の有効な手段としてIoTを活用した取り組みについて検討していきたいと考えています。」 (滋賀県竜王町 生活安全課 課長補佐 山中知樹氏)

全国の自治体にとって中小河川の水害対策は喫緊の課題であるが、地震や津波に比較すると対応しやすい災害であることから、日常時の事前準備と災害時のリアルタイムな状況把握ができれば被害軽減も不可能ではない。少しでも水害による被害を軽減できるようIoTによる地域防災力の向上が進展することを期待する。

協業パートナー/利用サービス


積水樹脂株式会社
http://www.sekisuijushi.co.jp/

セキスイ簡易水位センサ「小型IoT水位センサ」
https://www.kccs-iot.jp/solution/product/device55/

中小河川水位モニタリングシステム
https://www.kccs-iot.jp/solution/solutions/detail44/


取材時期:2020年9月
掲載日:2020年9月11日