事例紹介

日本瓦斯株式会社様
ニチガスの新型NCU「スペース蛍」にSigfoxを採用
~約85万件の大規模導入を計画~

設備・社会インフラ

(左から)ソラコム セールスマネージャーの滑川直人氏、ニチガス執行役員の松田祐毅氏、 KCCS取締役の松木憲一

日本瓦斯株式会社様

URL:https://www.nichigas.co.jp/

※以下、月刊テレコミュニケーション2020年5月号より転載

徹底したシンプルさでLPWAの先頭集団を行く!約85万件の大規模導入事例も

人口カバー率95%を超え、導入に弾みが付いているSigfox。なかでも最大規模の導入事例が、ニチガスの新型NCU「スペース蛍」への採用だ。ニチガスでは遠隔検針にとどまらず、エネルギー業界全体でのデータ収集にSigfoxを活用し、業務の最適化を図ろうとしている。

IoT向け通信規格、あるいはLPWA(Low Power Wide Area)と言われて、真っ先にSigfoxを思い浮かべる人は多いだろう。国内ではIoTの広まりとともに新たなLPWA規格も登場しているが、Sigfoxは2017年2月のサービス開始以来、常にLPWA市場の先頭集団を走り続けてきた。原則として1国につき1事業者とのみ契約する方式を採用するSigfoxは、国内では京セラコミュニケーションシステム(KCCS)がオペレーターとしてインフラの構築・運用およびサービス展開を担っている。

その特長は、一言で言うと「シンプル」であることだ。
アンライセンスバンドの920MHz帯を利用し、1回あたり12バイトと軽量なデータを1日最大140回送信する。通信速度は上り100bps、下り600bps。このように極めてシンプルな仕様にすることで、デバイスによっては電池で10年程度稼働する低消費電力を実現するほか、デバイスやアプリケーションの構築にかかるコストも抑えることができる。「シンプル、低消費電力、低コストを追求したLPWA規格でSigfoxの右に出るものはない。だから競合する規格もほとんどないだろう」とKCCS 取締役 LPWAソリューション事業部 事業部長の松木憲一氏は自信を見せる。

Sigfoxの特長を活かしたユースケースには、ガスや水道の遠隔検針・遠隔監視、子供や高齢者の見守りなどがある。基地局を利用した位置測位は、GPSほど電力を消費せず、GPSの届きにくい屋内の設備なども大まかな位置を把握できるため、最近はコンテナやパレットの位置管理にも活用されている。

KCCSではSigfoxのエリア拡大に積極的に取り組んでおり、当初の計画を前倒しして2019年3月に人口カバー率95%を達成した。松木氏は、「この95%という数字が非常にインパクトがあった」と語る。国内のほとんどの場所でつながるようになったのはもちろんのこと、それまで「本当につながるのか」と懐疑的だった企業も本格的に検討・導入に踏み切るようになったという。

その結果、この1年間にSigfoxの導入は加速しており、大規模導入事例も生まれている。なかでも代表的な事例が、日本瓦斯(以下、ニチガス)のNCU(Network Control Unit)「スペース蛍」への採用だ。

残量の可視化で交換時期を最適化 配送業務の向上でコストも削減

ニチガスは、LPガス、都市ガス、電気の小売事業などを行う総合エネルギー企業。関東地方1都6県・山梨県・静岡県で事業を展開、167万件以上のお客様にガスと電気を提供している(2020年2月末現在)。
スペース蛍は、ガスメーターをオンライン化し、ガスの使用量をリアルタイムに計測可能にするNCUだ。
これまでは1カ月に1回、作業員が各家庭を訪問し検針データを計測していたが、スペース蛍で遠隔から1時間に1回の頻度で自動計測することで、従来の720倍もの精緻なデータの把握が可能になる。これによりガスの使用量が可視化され、ガスボンベの交換タイミングを最適化することができる。配送効率も飛躍的に向上するため、オペレーションコストが大幅に削減される。

スペース蛍には、ソラコムが提供するIoT向けデータ通信サービス「SORACOM Air for Sigfox」が使われている。ニチガスはセルラー系も含めて様々なネットワークを検討したが、「機能を必要最小限に絞り込むと送信するデータ容量も小さくなり、低消費電力かつ少ペイロードで安価なSigfoxが適していた。従来のNCUにありがちな無駄を省きたいという我々の考えに、Sigfoxの仕様がドンピシャだった」と執行役員 エネルギー事業本部 情報通信技術部長の松田祐毅氏は振り返る。

Sigfoxには、地下やパイプシャフト(給排水管やガス管を通すスペース)のようにカバーすることが難しいエリアがある。ニチガスでは、そうしたエリアについてはLTE-Mなど他の通信規格を補助的に利用することを検討しているが、SORACOM Airは、プラットフォーム上でセルラーやLPWAなど複数の通信規格あるいは複数の通信キャリアの回線を統合管理できることも採用の決め手になったという。

KCCSでもSigfoxの電波が届きにくい場所に対し、必要であれば個別に基地局を設置するなどの対応を取っている。「KCCS1社に相談すれば最適化できるのもSigfoxの強み」とソラコム セールスマネージャーの滑川直人氏は話す。

2分間でメーターへの設置完了 都市ガスにも「スペース蛍」展開

スペース蛍の設置作業は今年2月から始まっており、2021年3月までに約85万件すべてのLPガスユーザー宅への導入を完了する計画だ。短期間での大規模な設置を可能にするため、ニチガスとソラコムはデバイスの設計にもこだわっている。スペース蛍は、ガス管に本体を結束バンドで固定する。その際、より短時間で固定できる方法を追求した結果、たどり着いたのが蛍のような形状だったという。取り付け作業そのものは2分程度、1件あたり5分もあれば設置作業は完了する。

ニチガスではLPガスに続き、約41万件のユーザーがいる都市ガスにもスペース蛍を順次導入する予定だ。数年以内には、スペース蛍を通じて、100万件を超えるユーザーからのビッグデータがニチガスの元に集まることになる。

実は、遠隔検針はニチガスのDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みの第1歩にすぎない。その先に描いているのが、エネルギー業界全体を巻き込んだ業務最適化の実現だ。エネルギー業界においても人手不足は深刻な課題となっており、特に検針データの計測を行う作業員や、LPガスの配送を担当するドライバーの確保に各社とも頭を悩ませている。

ニチガスでは、ソラコムと共同開発したプラットフォーム「ニチガスストリーム」上で、多様な通信データを統一された規格のデータに変換。そのデータを他社の基幹システムとAPI連携することで、会社の垣根を超え、配送業務のシェアリングによる効率化の実現を目指している。その際、エストニアの暗号認証技術「X-Road」やプライベートブロックチェーンを用いることで、データの匿名性や整合性、互換性を保証するとともに、改ざんや不正アクセスを防止する。

図表 各社の基幹システムとのAPI連携

また、ガスだけでなく電気にも展開することで、「各家庭の利用状況や消費機器に合わせて、近い将来、時間単位でガス会社や電気会社を変更し、常に最も安いサービスを選択できるようになる可能性がある」(松田氏)という。

2022年には「ガス導管事業法的分離」が予定されており、電力業界と同様、ガス業界でも競争が激化すると見られる。変革の時期を迎えているエネルギー業界で、Sigfoxが重要な役割を果たすことになりそうだ。

協業パートナー/利用サービス


ソラコム株式会社
https://soracom.jp/

SORACOM Air for Sigfox
https://www.kccs-iot.jp/solution/product/platform9/


取材時期:2020年3月
掲載日:2020年5月13日


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