新製品は不況のときに生まれる

事業部長コラム

みなさん、こんにちは。

KCCSでSigfoxを担当しております、LPWAソリューション事業部長の松木です。

さて、京セラのホームページに「創業者 稲盛和夫 Official Site」というコーナーがあり、その中をのぞいていくと、「不況に備える7つの心構え」というページが見つかります。

京セラも過去にオイルショックや土地バブル、ITバブル、リーマンショックなどの不況を経験してきました。

その時の教訓が「不況に備える7つの心構え」としてまとめられています。

新型コロナウィルスが引き起こした今回のパンデミックは、過去に経験がないほどの不況の引き金になるのではないかと言われています。

これらの教訓が、コロナショックに対峙せねばならない私たちにとってのなんらかのヒントにならないかと考えています。

さて、その教訓の中のひとつである、「新製品開発に全力を尽くす」をここではさらに詳しくご紹介します。

この教訓が生まれたエピソードがとても興味深いからです。

このエピソードは、以下の本から引用しています。

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稲盛 和夫 著

「燃える闘魂」

毎日新聞社 / 2013.9.4発行

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この本によれば、第一次オイルショックの時に、繊維機械向けのセラミック部品がまったく売れなくなってしまいました。

繊維機械では、糸を高速で走らすので、糸を支えるガイド役のリング状部品は、摩耗に強いセラミックが使われていました。

しかし、繊維機械部品の注文が途絶えてしまったために、当時の営業マンは、釣り具のさおに目をつけ、静岡の釣り具メーカーを訪問し、次のように提案したそうです。

「京セラはセラミック屋です。繊維機械の糸が高速で走る摩耗の激しい部分に、摩耗をしない当社のセラミックスを使っていただいています。御社は釣りざおを扱っておられますが、さおにも釣り糸の走る部分に金属のガイドリングが付いています。この部分をセラミックスのリングにしてはいかがでしょうか。非常に適していると思います」

(「」部分は上記書籍より引用。以下同じ)

しかし、当初、釣り具メーカーは、コスト高になると否定的でした。

それでも営業マンはあきらめずに、次のようにせまったそうです。

「いえ、セラミックスにすれば摩耗しないだけでなく、釣り糸との摩擦係数も減ります。これは、糸が切れにくいということであり、釣りにとっては非常に大切なことであるはずです」

従来の金属製のガイドリングだと摩擦係数が高いために、負荷がかかると熱が発生し、糸が切れてしまっていました。

営業マンに根負けした釣り具メーカーが試したところ、セラミック製だと切れなかった。

釣りにおいては、大物がかかったときに切れない(バレない)というのは大きなメリットであり、それ以降、高級な釣りざおにはすべてセラミックス製リングが搭載されるようになったそうです。

この本の出版は2013年ですが、この静岡の釣り具メーカーが始めたものが全世界に広がり、オイルショックから四十年近くが経過したいまでも、このガイドリングの注文をひと月に数百万個ほど受けていると書いてあります。

さて、翻って現在、私たちは新型コロナウィルスに翻弄されています。

今まで生産性をあげるために有効だった3密が、ウィルス感染の温床となり、人は外出を自粛せざるを得ない事態となってしまいました。

たとえ、今の混乱が落ち着いたとしても、人が集まらない、移動しないということが社会的な習性として今後は社会に根付いていくと思われます。

一方、その分、モノがさかんに動いていくでしょうし、モノの声を居ながらにして聞く技術が、社会生活を営むのに不可欠になっていくと思います。

このような背景においては、社会構造が大きく変化することにより、新たな製品が出現する需要が生まれてくると思います。

特に、私たちが籍を置くIoT分野は、単に事業としてだけでなく、社会解決のための新パラダイムを支える基盤となっていくのではないかと私は考えています。